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今回はエロ無しです。
ピンチ!Tファイト同好会!
「あーかねっ!」
未だ、昨日の疲れが取れず、どこかぼんやりとしながら登校している茜の後ろから、聞き慣れた元気な声が聞こえた。
「ん?雪乃、おはよう」
「なに茜、疲れてるねー♪昨日の茜のイキッぷり、見事だったよー」
「ちょ、ばか!朝から大声でそんな事言うな!」
何人か振り向いた通行人の目をはばかる様に、茜は足を速めた。その後ろを雪乃が付いて行く。
小鞠学園に着き、教室を目指す2人。教室は隣同士のため、最後まで一緒だ。2人はふと、Tファイト同好会の張り紙に目が行った。
「なにあれ?」
「なんか……貼ってあるね。見てみよう」
――このサークルへを許可することは出来ません。つきましては、サークルの代表者は昼休み、生徒会室へと来てください。 生徒会役員 青木恵理香――
と書いてあった。
「な、なにこれっ!!どういう事よっ!」
怒りのあまり、雪乃は生徒会からの張り紙を破り、グシャグシャと丸めて鞄に突っ込んでしまった。
「青木……恵理香……あの人だ……」
「茜!昼休み、湶さんとこ行こう!」
「う、うん……」
4時限目の授業が終わり、小鞠学園は昼休みとなった。
「さぁ、茜行こう?」
チャイムが鳴り終わると同時に、雪乃は茜の教室のドアを勢いよく開けた。まだ先生やほとんどの生徒が授業の後片付けをしている中、茜は雪乃に引っ張られて教室を出た。
「ねぇ雪乃。湶さんどうするんだろう?」
2人は廊下を小走りで3年の教室まで進んでいく。
「ん?とりあえず、3-Bの教室前まで来て欲しいって、Tベルにメールが入ってた」
「そんな機能もあるんだ!Tベル!」
3-Bの前に着いた。すでに湶と姫璃は窓ガラスにもたれかかり、何か話している。
「「湶さん!」」
2人同時に湶の元へと駆け寄る。
「ああ、来てくれたんだね。さっそく話して行こうか。既に知ってると思うけど、私達のサークルが生徒会に目を付けられたみたい。」
「一体、なんで……」
雪乃が悔しそうにうつむく。
「それが、分からないんですの。一体どういう事なのか……」
「あの……皆に言ってなかったんですけど……」
茜が重い口を開いた。
「あの張り紙を張った生徒会役員を、私知ってるんです。実は湶さんと姫璃さんが屋上で戦ってた次の日、私のところへ青木恵理香っていう人が来て……Tファイトサークルはこれから生徒会が主導で、部活動として発展させていくからサークルは認められないって言われました」
「なっ!そんな事言って来てたの!?」
雪乃が声を荒げた。
「こらこら雪乃ちゃん。今は昼休みだから、みんないるからやめよう?とりあえず、向こうの要望通り生徒会室に行ってみるね」
「湶さん」
「大丈夫、私も、このサークルを続けて行きたいと思ってるから。そう伝えてくるよ」
湶は生徒会室へと向かおうとした。しかし――
「――ちょっと待って下さる?私も行きますわ。あなた一人に行かせて、言い負かされて帰ってきたなんてあったら恥ですわ」
「姫璃さん……」
「私も行くよ!湶先輩!その青木恵理香ってやつが、どんなやつか顔見てやる!」
「……雪乃ちゃん」
「茜も行くでしょ?」
「……当然っ!それに、あの青木先輩には個人的に用があるからね」
「みんな……ありがとう……」
湶は今まで見たことのないような優しい笑みをこぼした。
「じゃあ行きますわよ!身の程知らずの生徒会に、抗議しに!」
奮い立ったように、姫璃が先陣を切った。
「――あんたがしきるな!」
しかし、横から雪乃によって野次が入ってしまった。
「あんたとは何よ小娘!」
「まぁまぁ、のんびりしてると昼休みが終わっちゃうから、早く行こう?」
さすがはこのサークルの代表者だけあり、湶はしっかりしていた。
「「「おー!」」」
そして、4人は生徒会室へと向かった。
「ここが生徒会室か……」
学園の3階の一番奥にある部屋、生徒会室だ。茜にとっては、つい先日足を踏み入れた部屋である。
「失礼します」
ガラガラと音の鳴るドアを引き、湶は中へ入っていった。後から姫璃、雪乃、茜が続く。部屋に入ると、生徒会の役員が4人、教室の中で座っていた。そして、その中で一人だけが立ち上がり、一歩前へ出た。その人物は、深い青髪のショートヘアで、体つきは見た感じ細見だがどこか威厳を醸し出していた。
「お越しいただけて光栄です。学園長の孫娘、篠原湶先輩……と、その他の方々もいらっしゃったのですか」
「ちょっと!私をその他に分類するなんていい度胸じゃな――」
「――あなたは確か……」
「申しおくれました。私、この小鞠学園の副生徒会長を務めさせていただいております桜井由華と申します」
桜井由華。彼女は2年生でありながらも、副生徒会の他に、女子剣道部の主将を務めるほどの人物であり学園内では有名人である。
由華が一礼をしたタイミングで、残りの3人の生徒会役員もこちらを振り向いた。
「紹介させていただきます。右側から、生徒会部活動執行部役員、青木恵理香先輩です。そして、まだ生徒会に入って日にちは浅いですが、1年の早乙女麻衣さんと、早乙女芽衣さんです」
茜と恵理香の目が合う。
「ええ、覚えておくわ。でも私達は、自己紹介をしにここへ来たわけではないんです」
「ふふ、分かっています。張り紙の事ですよね。恵理香先輩、お願いします。私はこれで。別の用事があるため、席を外します。」
由華はそう言うと、茜たちに会釈をし、生徒会室から出て行った。それと同時に、恵理香が口を開く。
「単刀直入に言いますと、今私達は生徒会を主導としてTファイト部の設立を企画しており、全国大会出場も目標にしています。しかし、ただでさえ人数の少ないこの学園で、あなた達Tファイト同好会に部員を取られてしまうと非常に困ってしまいます。そこで、生徒会からの要望としましては、Tファイト同好会は解散し、あなた達は新たに生徒会の作るTファイト部として活躍していただけないかと――」
「――お断りします」
湶は即断した。
「なっ、これは生徒会からの要望ですよ?そっ、それにっ、私達は全国大会を目指してるんです!あなた達はサークルから、立派な部活動として活動できるって言う事なんですよ?」
焦る恵理香に、湶は何の曇りもない笑顔で返した。
「あなた達がどう考えていようと、口をはさむつもりはありません。でも私達のサークルの目標は全国大会出場ではなく、全国大会優勝です。私達は、私達のやりたいようにサークルとしてやらせていただきます」
「え、全国大会?マジ……ですか」
「湶先輩かっこいー!」
「言いますわねー」
湶の切った啖呵に、茜以外は大盛り上がりである。
「……そんな……、あなた達の力が必要なんです……。お願いですから――」
「――恵理香先輩」
椅子に座っている、双子のうちの一人、早乙女芽衣が静かに口を開き、1枚の手紙を出した。
「……会長から、こういうの預かってます」
「ん?あっはっは、何これー」
横から覗きこんだもう一人の双子、麻衣は思わず笑い出した。
「……麻衣、会長は本気なのよ?笑ったら失礼だわ」
恵理香は、湶や茜たちにも見えるようにその手紙を広げた。そこには、小鞠学園の生徒会長からの伝言が書かれていた。
『Tファイトサークル、解散しないようなら潰しちゃっていーよ♡ 今回、私と由華たんはちょっと他の事が忙しくてそっちまで手を回せないんだ(>д<) ごめんねーw 恵理香たんと双子たんの3人で、サークルの子らと、Tファイトでもやって決めたら?じゃあね☆』
「……宣戦布告と受け取っておきますわ」
「確かに、Tファイターとして、勝者に従うっていうのが一番わかりやすいんじゃない?生徒会のおねーさん♪」
姫璃と雪乃はやる気満々のようだ。
「恵理香先輩、そいつらの言うとおりだよ。めんどいからTファイトで決めちゃおうよ。芽衣もそう思うでしょ?」
「……うん、思う」
「会長……むちゃくちゃです……でも、私とて生徒会の一役員……やるしかないですね。放課後、ここに来てください。こちらから出す条件は、私達が勝ったらあなた達はサークルを解散し、部活動として活躍していただく事です。お願いします」
「ええ、分かった。じゃあこっちから出す条件は、サークルの許可ですね。放課後、また来ます」
湶たちは生徒会室を後にした。廊下では、先ほどの全国大会優勝の目標の事で大盛り上がりである。
「まさかそんな大きな目標があったとは、知りませんでしたわ」
「私もー!でも頑張るよ!」
「全国大会かぁ……、どんなのがいるんだろう」
「たはは、ごめんね、なんか引くに引けなくなって、つい言っちゃった。という訳で、みんな頑張ろうね」
「もちろんですわ。私の所属しているサークルなら、それくらい当然です事よ」
「ところで湶先輩、放課後どうするんですか?」
「ああ、そうか。忘れてた。多分ルールは先に3戦して、勝ち数の多い方の勝ちってとこだと思う。向こうはさっきの双子と、恵理香ちゃんが相手だと思うけど、こっちはどうしようか?」
「……茜さんには悪いけれど、ここは確実に勝ちを狙って行ける私と湶さんと、この小娘で出た方が良いと思いますわ」
確かに負けられない戦いである。茜にもそれは分かっているが、心のどこかで恵理香にリベンジをしたいと思う自分がいた。
「……それでいいの?茜ちゃん」
「……私は――」
「来ましたねTファイト同好会の皆さん」
放課後、茜たちTファイト同好会の一同は先ほど訪れた生徒会室へと集合していた。室内には茜たちの他に生徒会役員の3年、青木恵理香。そして1年の早乙女麻衣と早乙女芽衣がいる。今から湶たちは、Tファイト同好会の存続をかけて、この三人とTファイトを始めようとしていた。
恵理香が一歩前に出てルールを説明し始めた。
「今からあなた方の中から3人選んで、私達とTファイトで戦ってもらいます。3戦し、勝ち数の多い方の勝利というルールでいいですか?」
「いいよー」
「構いませんわ」
「異論なしです」
「……、うん」
Tファイト同好会はみな、準備万端だ。
「なら始めましょう」
恵理香の開戦の合図をすると、生徒会側の他の2人、早乙女麻衣と、芽衣はTベルを起動しTワールドへと向かった。それに続き、茜たちもTベルを起動する。
Tワールドへ着くと、生徒会側の3人はすでに準備をしていた。恵理香は、”あれ”から約一週間、練習モードや対戦でTマネーを溜めて装備品を買ったのだろう。茜が依然見た恵理香のTワールド内での服装は通常のスクール水着だったが、今回はメイド服になっていた。
早乙女姉妹は物静かな芽衣とヤンチャそうな麻衣、二人ともフリルで包まれたゴスロリのような服装をしていた。
「こちらは1年の早乙女芽衣さん、そして早乙女麻衣さん、私の順番で戦います。そちらも順番を決めてください」
「こっちの順番はもう決まっていますわ。先発は私、そして2番手は雪乃、そして3番手に茜ですわ」
姫璃はストレッチをしながら自信満々に答えた。
「……学園長の孫娘、篠原湶先輩はTファイトが強いと聞いています。てっきり3番手はあなたかと思ってました。麻衣もそう思うでしょ?」
「うん、思う思う!どういうつもり?こっちは私と芽衣で最初に2勝して、湶先輩との戦いを避けようと思ってたのにー!」
「あら、言ってくれますわね。顔が一緒で分かりませんわ。どっちが私の対戦相手ですの?1年だからって手加減しませんわよ」
姫璃は華やかなドレス撫でながら、いやらしい指使いで早乙女姉妹を挑発した。
「……私」
芽衣が一歩前に出た。
正式な対戦をTファイトで対戦をする場合、フィールドはランダムで選ばれる。二人の対戦の準備が出来た瞬間、真っ白なTワールドが急に変化し、四方を金網に囲まれた闘技場のような場所となった。姫璃と芽衣が舞台の中央に立ち、その他の人は部隊を取り囲む観客席に座っていた。
「泣くまでイカせてあげますわ」
「…………先輩に私のマジックを見せてあげます」
そして、Tファイト同好会の存続をかけた戦い、第一回戦 姫璃vs芽衣の戦いが幕を開けた。