生徒会 青木恵理香登場! 「あーかねっ!」
昨日と同じように、校門のところで茜は雪乃に後ろから肩を叩かれた。
「あ、雪乃、おはよう」
「おはよー! どう? 私達と一緒にTファイト、やらない?」
雪乃は早速昨日の回答を茜に求めた。しかし、茜は生まれて初めてあんなに激しい戦いを目に焼き付け、若干の恐れを抱いていた。
「うーん……ちょっとまだ考え中。入ってる部活やサークルは無いし、入ってもいいんだけど、ちょっと悩むってとこ」
「そっか、私としては、茜が入ってくれると嬉しいんだけどなぁ。なんなら、今日授業終わった後にTファイトの魅力を直接私が教えてあげようか? フヘヘ」
ニンマリと、いやらしい笑みを浮かべ、雪乃は茜の方を見た。
「え、遠慮しとくよ……。さ、早く行かないと遅れちゃうよ?」
「んだねー、もし入ってくれるようだったら、授業終わった後、3-Bに来てね! じゃねー!」
相変わらず雪乃は元気に走り去っていった。
「はぁ……」
茜は一人、憂鬱なため息をついた。
授業が終わりのチャイムが鳴った。帰りの支度だけを適当に済ませ教室を後にする。
「茜、一緒に帰ろうよー!」
昨日の友人が声をかけてきた。
「あー、ごめんねー。ちょっとこれから先輩のとこ行かないといけなくなっちゃって。ほんと、申し訳ない」
残念そうに引き下がる友人を後に、断る言葉を考えながら頭を抱え、茜は3年の教室へと向かった。
「んー、なんて言おうかな……。やっぱり私には向いてないと思います……すいません、怖いので……うーん……これでいいのかな。……ともかく、このTベルは返そう。」
「2年生の、笠原茜さんですね?」
と、その時、後ろから聞き慣れない声に足を止められた。振り返ると、見知らぬ女性。サラサラとした黒の長髪にメガネという、大人しそうな女性だ。
「私、生徒会風紀委員の青木恵理香といいます。ちょっとお話があるのですけど、付いて来てもらえませんか?」
「え……っと、生徒会さんが一体私に何の用なんですか?ちょっと急いでるんですけども」
「ちょっと、お聞きしたいことがあるのですけど、ここじゃ色々とアレなんで。さ、こっちへ」
アレという意味が分からなかったが、歩き出してしまう恵理香に半ば強引に連れていかれる感じで茜も後に続いた。
恵理香に連れてこられた場所は、生徒会室だった。
「今日は誰もこの部屋には来ませんから。さっそくお聞きしたいんですけど……」
茜を先に部屋に入れ、自分は後から入ってドアを閉めながら恵理香は振り返った。部屋の中はシーンと静まり返っている。
「昨日、あなたとあなたのご友人の内田雪乃さん、そして3年の篠原湶さんが屋上で堂園姫璃さんがTファイトをしていたそうですね。私達、生徒会はまだあなた方のサークルに許可を出していません。これは、違反行為です」
先ほどの雰囲気とは打って変わり、恵理香は冷たく言い放つ。
「いや、ちょっと待って下さい!誤解です!私は見てただけでTファイトはやってませんよ!」
「篠原湶さんは学園長の孫という事もあり、いきなり彼女に問い詰めて今回の事を表沙汰にすることは難しいと考え、まずはその周囲から聞いて行こうと思いまして。」
表沙汰、という言葉に茜はビクッとする。
「い、いやだから、誤解ですって」
「あくまでシラを切りますか。……分かりました。そこまで言うのなら、あなたにTファイターとして私の挑戦を受けていただきます。私が勝ったら、真実を話してもらいます!」
「や……はぁ……? ちょ、私はTファイターじゃないしっ――」
「行きますよっ!」
言うが早いか、恵理香は茜に飛びついてき、Tベルの電源を入れてしまった。瞬く間に、茜の意識はTワールドへと飛ばされた。
「こ、ここは昨日と同じ……」
茜が気づくと、昨日の何もない真っ白な部屋にいた。
「さぁ、行きますよ」
恵理香のTワールド内での服装は通常のスクール水着だった。
「ちょっと待って下さい! 私、まだ服も持ってないんですよ! 昨日から始めたんです!!」
「さっき、あなたは私はTファイターじゃないと言っていましたよね? やっぱりあなたはTファイターじゃないですか」
「ああ、いやしまった! そういう意味じゃなくて……っ!」
「問答無用です。行きますよ! 触手召喚!」
「きゃあっ!!」
突如足元に緑色の触手が一本現れ、茜の右足に絡み付いた。
「ふふふ、実は私も、Tファイトファンで少しだけ勉強しているんですよ! 今はまだ操れる触手の数は一本ですけど」
茜は、まったく初めての経験に、頭の中が真っ白になり右足に絡み付いた触手を外そうとするがその隙を突かれて湶に押し倒されてしまった。
恵理香は茜の上にかぶさるようにしてのしかかり、自分の太ももを茜の太ももの間に入れ、足を絡めるようにして動きを封じる。そして茜の胸を揉み始めた。
「やっ、あっ、やめて……・よっ……!」
必死に抵抗しようとする茜だが、今の今までこんな経験はしたことが無いためどうすればいいのか分からない。揉まれ続ける胸に、最初は不快感だけで抵抗していたが、いつの間にか何とも言えない感覚が押し寄せてきた。
「き……気持ち……い……っ……んっ……」
「まだ装備も持っていない程に初心者だっていうのは、どうやら本当のようですね。こういうのは……どう?」
恵理香は胸を揉んでいた手を、下に伸ばし、茜の秘部に触れた。誰にも触られた事が無い部分をまさぐられ、電撃が走ったかのように茜は体を痙攣させた。
「ひゃぁあああんっ!!」
どうすればいいのか分からず、されるがままに快感を受け入れてしまう茜を見て恵理香は茜が素人であるという事を見抜いた。
「それならば、快感ではなくくすぐられる辛さを体に教えてあげましょう」
「ふぁっ――?」
恵理香は、既に腰に力が入らない茜を正座させ、そのまま茜の体を後ろに倒した。そして太ももの上に馬乗りになり、地面から生えている触手が茜の手首に巻き付いた。こうなると、力の弱い茜が脱出することはほぼ不可能に近い。
「ふふふ、神聖なTファイトに泥を塗ったあなた達の行為、許しませんよ。覚悟してください?こちょこちょこちょこちょ~」
「ひゃっ!!?あぁ~っはっはっはっはっはっははははははは!!やっ、やめっ!!やめてぇぇっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!」
恵理香の指が茜の腋やわき腹を這いまわると同時に、先ほどとは打って変わった茜の笑い声が響いた。
「Tファイトでは、相手をイカせて勝つよりも、相手をくすぐって勝ったほうがポイントが高いんですよ~」
「ひゃぁぁあっはっはははははははははははははは!!くっ、くすぐったいよぉぉおっはっはははは!!!苦しいぃいっははははははは!あ~っはっはっはっはっはっは!!!」
茜は、無理な姿勢でくすぐられているため、上手く呼吸が出来ずに、くすぐりによって今まで経験したことのない苦しさを感じていた。
「この押さえ込みは一昨日ビデオを見て勉強したんです。この状態だと相手の腋、お腹、そして足の裏までくすぐることが出来るんですよ!フフフ!」
証明して見せるかのように、恵理香は太ももから両外側に出ている足の裏に指を這わせる。
「きゃっははははははははは!!!足の裏やめてぇえっはっはっはっはっはっははは!!!」
「まだまだ、反省するまで許しませんよ!こちょこちょこちょこちょ!」
「うひぃいっっひひひひひひひっひ!!ぐ、ぐるじぃいっはっはっはっはっは!!!ご、ごめんなさいぃっはっは!!ごめんなさいぃぃいい!!!」
茜は、別に自分が悪いことをしていないにもかかわらず、恵理香の「反省するまで」という言葉を聞いて、一心不乱に謝り続けた。
「本当に反省してるんですか?」
恵理香は、指を蜘蛛のように蠢かせてさらに茜を追い詰める。
「はっ、はいぃいいっはっははは!!してますぅうっはっはははははは!!してますっはははははっはっはっはっはっはっはっはは!!!」
それから数分間にわたり茜はくすぐられ、ついには苦しさから軽い失神をしてしまった。
「…………ふぅ。こんな所でいいでしょう。Tファイトはこれから、生徒会が主導で部活化をしていく予定です。その前にあなた達のような人にサークルを作られては、お互い不利益になりますからね。あなた達には引いてもらいますよ」
Tベルのスイッチを切り、恵理香は満足げに生徒会室を出て行った。
気が付くと茜は、生徒会室に汗だくで横たわっていた。一人では立てないような疲労感も感じている。くすぐられてボロボロになった状態で床に横たわり、「悪い事をしていないのに謝り続けた自分」、そして「見ず知らずの人間に負けた」事への悔し涙を流していた。
「茜、遅いなー」
ため息をつきながら、湶の隣の席の机に腰を掛ける雪乃。今は放課後、ほとんどの生徒は帰宅したか、部活やサークルに行っているため、3年の教室と言えど残っている生徒はごくわずかだ。
「いきなり激しい戦いを見せちゃったから、怖くなっちゃったのかなー、たはは」
湶は頭を掻きながら苦笑いをした。
「茜には是非とも、一緒に戦ってほしかったんだけどなぁー」
と、そこへ教室のドアが勢いよく開く音がした。
「――茜っ?」
雪乃が勢いよく振り返るとそこには――
「……ごきげんよう」
昨日、屋上にて湶に完敗した姫璃が不機嫌そうに立っていた。
「なんだあんたか」
見るからにガッカリしたように雪乃はため息をついた。
「ちょっとあなた、先輩に向かってなんて口を……!!」
「あんたは、あんたじゃん」
「まぁまぁ……ようこそ、姫璃さん。本当に来てくれたんですね」
湶が間に割って入り、二人を制止した。
「……そりゃ、私とて一人のTファイター……。約束はちゃんと守りますわ。ジムにも通いながら、このサークルにも入って差し上げますわ。」
姫璃は、不本意と言わんばかりに、そっぽを向いた。
「ふふふ、何はともあれ、これからよろしくお願いしますね。必ず5人以上集めて、大会へ望みましょう」
「オー!」
「……ふんっ」
「……雪乃ちゃんの友達の、茜ちゃんだっけ? は、やっぱり無理そうかな?」
「うーん、どうなんでしょうか。返事はくれる事になっているんですけど――」
と、その時、教室のドアがガラガラと音を立てて開いた。そこには、何かを決心したかのようにキリッとした表情の茜が立っていた。
「湶さん、雪乃、あと……。私、このサークルに入ります」
「ちょっと!私の名前を――ッ!」
「……どうしたの?茜?目、赤くない?」
「――そう、その何かを乗り越えようとしている顔、大好きよ。それならこれからよろしくね?茜ちゃん」
雪乃の言葉を遮るように湶は茜に手を差し伸べた。
「どうしても強くなりたいんです。頑張りますから、私を鍛えてください。」
茜は、湶としっかりと握手を交わした。
~続く~
~雑記+コメントの返信は続きから~
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